相次ぐ花火大会の事故 背景に「コロナによる大会中止」で抱える技術継承問題も「防ぐの難しい」花火師解説

花火大会での事故が相次いでいます。暴発を防ぐことはできないのか?

取材をすると、暴発を完全に防ぐことは難しいことが見えてきました。

その中で、花火大会の開催を目前に、各地で主催者が”花火師任せ”になっていた、安全対策に追われる姿がありました。

そして花火師たちが直面しているのは「技術継承」の難しさ。

その背景には、新型コロナの流行で花火大会の中止が続き、職人が仕事から離れたことがありました。

■夜空を彩る夏の風物詩 花火業界を取材

夜空を彩る夏の風物詩、花火。

関西でも今後大きな大会を控え、まさにシーズン真っ盛り!

ところがー。

「やばいやばいやばい!」「きゃー!」「めちゃくちゃ燃えてない?あれやばいと思う!」

この1週間で立て続けに事故が発生。

実はどの大会でも暴発が起きる恐れも…。

【DJK代表取締役花火師 段克史さん】「大きな玉になるほど起こりやすくなります」

(Q.防ぐことは?)
【DJK代表取締役花火師 段克史さん】「難しい」

日本の伝統文化、花火の安全性は…。そして取材で見えてきた花火業界の課題とは?

■みなとみらい、淡路…相次ぐ花火大会での暴発

8月4日、横浜・みなとみらいの花火大会で。

【撮影した視聴者】「めちゃくちゃ燃えてない?絶対燃えてるよ。あれやばいと思う!」

花火の打ち上げ場所だった台船2隻が燃え、他の花火にも引火。花火の中止を試みたものの、コンピューターの制御が効かなかったということです。

【電話】「目の前に火が迫っています、(台船の)中にいられないくらい」
【消防】「今、海上保保安庁の小型艇、小さな船が近くにいるはずです。それが近くに来たら、飛び込んでください」

また、兵庫県の淡路島でも。

【撮影した視聴者】「うわ!」「ちょっとミスったんちゃう?」

花火が空に上がらず、低い位置で爆発。30分間で5000発を打ち上げる予定が、開始わずか10分で中止になりました。

この事故の原因とみられるのが、「筒ばね」という現象です。

■事故の原因は「筒ばね」 「仕上がりは同じ」打ち上げて初めて分かる

そもそも花火はどう打ちあがるのか、そして「筒ばね」とは何か、花火師に聞きました。

【DJK代表取締役花火師 段克史さん】「これが実際の花火の筒と同じサイズ。3号筒という直径9センチのもの。一般的な花火大会で多いサイズです。これが発射薬になります。この火薬で花火を上にあげます。発射薬を入れた後に花火を中に入れる」

遠隔でボタンを押すと発射薬に引火し、花火の玉が空に打ちあがります。

では「筒ばね」というのは―。

【DJK代表取締役花火師 段克史さん】「淡路島(の事故)は、『筒ばね』と言われてますけど、(玉が)一番下で開いた、もしくは筒に影響があって、上がらずに割れてしまった」

上空ではなく、筒の中で花火が暴発する事故だったのです。

「筒ばね」は、筒の変形などで玉が飛び出ださずに暴発するケースや、玉そのものの異常によって点火と同時に中の火薬に引火して、暴発するケースなどがあるということです。

それでは「筒ばね」の発生をどう防げばいいのか聞いてみると。

【DJK代表取締役花火師 段克史さん】「花火職人もそうならないように技術を持ってますし、毎年改良を加えながら作られています。見過ごしであるのか、ヒューマンエラーなのか、紙のちょっとした隙間で(筒ばねが)起こりますので」

(Q.見た目ではわからない?)
【DJK代表取締役花火師 段克史さん】「仕上がりは、ほぼどれも同じです」

(Q.打ち上げて初めて正解がわかる?)
【DJK代表取締役花火師 段克史さん】「そういうことです」

■これから開催予定の花火大会の対策 茨木辯天花火大会では「草刈り、水まき」

100%の安全を確保するのは難しい中、花火大会ではどう備えているのでしょうか。

8日、開かれる大阪の「茨木辯天花火大会」では…。

【「茨木辯天花火大会」実行委員会 小山年春会長】「花火を上げるのはここです。山の中なので、とにかく火が怖いんですよ」

(Q.火花が飛ぶ雑草は?)
【「茨木辯天花火大会」実行委員会 小山年春会長】「草刈りして、消防のホースで水巻き」

打ち上げ場所の芝生を刈り取ったうえ、当日は周囲に水をまくことで、引火するリスクを軽減しているということです。さらに消火用の水3トンを近くに備えています。

(Q.不測の事態が起こっても大丈夫なように?)
【「茨木辯天花火大会」実行委員会 小山年春会長】「なんせ不測の事態ってよく起こりますからね。できるだけ100%(の安全)に近づける、悪いところは改善して、良くする」

■これから開催予定の花火大会の対策 びわ湖大花火大会では「打ち上げ場所の安全確認」

不測の事態に備える各地の花火大会…。

【記者リポート】「滋賀県の琵琶湖では、花火大会の会場の設営作業が行われます。また、湖の方を見ると、水上から花火を発射する場所も設置されています」

8日、開かれる「びわ湖大花火大会」。

担当者に話を聞きました。

(Q.台船から陸までの距離は?)
【びわこビジターズビューロー 濱田康之企画広報部長】「約500メートル確保しています。火の粉とか会場の来場者に被害が及ばないよう、安全面を考えた上での最適な距離」

大津市は、打ち上げ場所から観客席まで、280メートル以上の距離を確保するよう求めていますが、運営側は万全を期すため、およそ500メートルの距離を確保。

さらに立て続けに起こる事故を受け、緊急で台船の視察を実施し、これまでは花火師から報告を受けるだけだった打ち上げ場所の安全確認を、共同で行いました。

【びわこビジターズビューロー 濱田康之企画広報部長】「台船のことは花火師に基本お任せにしている部分があったが、今回の事故を受けて実行委員会でも、何かしらあれば、一緒に進めていく必要があるのかなと」

■花火業界が直面 職人の高齢化と後継者不足

安全な花火大会を実施するには、運営側の対策と安全な玉を作る花火師の技術が欠かせません。

一方で取材を進めると、花火業界が直面する、深刻な課題が見えてきました。

【花火研究家 冴木一馬さん】「コロナの時に花火大会がなくなって、社員を賄えなくなった。業者によっては8割方、社員が辞めてしまった」

花火研究家の冴木一馬さんによると、「コロナ禍をきっかけに花火大会の中止が相次ぎ、多くの職人が離れた」ということです。

さらに、職人の高齢化と後継者不足で、技術の継承に課題を抱えています。

【花火研究家 冴木一馬さん】「花火師の仕事は1年が1サイクル。秋から春までに作って、夏に打ち上げる。これが1サイクル。若い人を雇って覚えてもらうしかないが、ゼロからというのはすごい時間がかかります」

花火師の段さんもこの事態に危機感を覚えています。

【DJK代表取締役段克史さん】「技術っていうのは、口頭で伝えることもあると思いますけど、実際に目の前で見る機会はシーズンしかありませんので、玉を作る技術・安全管理の考え方だったり、1年では承継できません。コロナの5年間でずいぶん消えたと思います」

夏の風物詩で立て続けに起こった事故。

安心安全な花火大会が存続するために、日本の伝統技術の継承が求められています。

■「コロナが伝統文化にも影響があるなんて…」と大東さん

番組コメンテーターの大東駿介さんは「花火の美しさだけでなく、職人の思いも楽しみたい」と話します。

【俳優 大東駿介さん】「後継者不足もそうですし、コロナの影響というのは、こういう伝統文化を守るっていうところにも影響があったんだなっていうことを知りました。あと、花火師さんって1年仕事なんですね。僕それも存じ上げなくて。だから今回こういう事故ありましたけど、きっとこれから色んな改善策が出てくると思うんすけど、僕たちはこれは花火を見るとき、ただ美しいだけじゃなくて、職人さんが1年かけた思いっていうのも同時に楽しみたいなと思ました」

(関西テレビ「newsランナー」2025年8月7日放送)

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