福島第一原子力発電所で計画されている燃料デブリの大規模取出しに向け、東京電力は8月19日から3号機原子炉建屋の1階での現地調査を開始する計画を公表した。
調査は9月中旬ごろまで実施し、放射線量や設備の外観調査などを行う計画で、格納容器につながる扉を開けるなどの操作はしない。
東京電力によると、調査を実施するのは事故前に作業員が点検のために原子炉に入る通路として使用していた部屋で、2016年にも放射線量の測定などの調査を行った。
2016年の調査時には1時間あたり13~80ミリシーベルトと非常に高い線量が計測されていたため、今回の調査も遠隔操作ロボットを使用して実施する。遠隔操作ロボットにはカメラや線量計を搭載する計画。
調査を行う部屋の中には格納容器につながる通路があるが、現時点で大規模取出しのための主要なアクセスルートとなるのはこれとは別の通路だと計画されている。一方、内部調査の結果によっては、今回調査の部屋の中にある通路を燃料デブリ取出し経路とすることや、取り出しのための内部の確認・調査に使用することも念頭に置かれている。
また、大規模取出しに向けて原子炉建屋の1階部分の放射線量の低減をはかるため、放射性物質の分布も把握したい考え。
3号機での本格的な取出しの工程案をめぐっては、廃炉への技術的な観点からの助言や指導などを行う原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)に対し、東京電力が7月に工程案を示した。NDFにより一定の技術的な成立性が確認されている。
工程案によると、「気中での取出し」「一部の燃料デブリは充填剤で固めてそれごと取り出す」という工法で格納容器の“横”と“上”からそれぞれ燃料デブリにアクセスする計画。放射性物質の飛散防止などのために設備や建屋を増設する必要があり、東京電力は「準備に12~15年かかる」としている。大規模取出しの開始は2037年度以降とされ、これまで掲げられていた目標である「2030年代初頭の着手」の達成は極めて困難な状況となった。
東京電力ホールディングスが公表した2025年度第一四半期(4~6月)の連結決算では、燃料デブリの本格的な取出しの準備に向けた費用として9,030億円を計上し、この期間としては過去最大の8,576億円の赤字に転落している。
廃炉にかかる費用は約8兆円と見込まれているが、廃炉作業の全体像はまだ見えていない。
福島第一原発では、国の廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議で決定される「中長期ロードマップ」に基づいて廃炉作業を進めているが、このなかで廃炉の完了は事故から30~40年後の「2041~2051年」とされていて、東京電力は現時点で廃炉完了時期の見直しはしていない。