取り締まるはずの警察官が相次いで逮捕される異例の事態が起きている。
8月5日、大阪府警本部から次々と送検された2人の所属は、「大阪府警捜査四課」。
大阪府警の捜査四課と言えば…
捜索時の警察官:はよ開けろや!アホ。
暴力団関係者:どちらでっか?
捜索時の警察官:大阪や!

暴力団など反社会的組織の捜査にあたる「大阪府警捜査四課」の現役警察官。
元暴力団組長インタ:大阪は焼き入れるというイメージ。桜の代紋を持ったヤクザ。
元暴力団担当刑事:仕事では、なめられたあかん、なめられたらあかんというのは、根本にある。
なぜ逮捕が相次ぐ事態になっているのか、徹底取材した。

■捜査対象者に暴行か 大阪府警捜査四課に所属する警察官
記者リポート:容疑者の警部補は顔を下にぐっと下げ、表情を見えません。
記者リポート:容疑者の巡査部長を乗せた車が出てきました、じっと前を見ています。
8月5日、大阪府警察本部から次々と送検された51歳の警部補の男と32歳の巡査部長の男。
犯罪を取り締まるはずの2人に一体何があったのだろうか。
ことの発端は7月。
女性を違法に性風俗店に斡旋した疑いで、スカウトグループの拠点とみられるビルに家宅捜索に入った時だった。
記者リポート:こちらのビルに大阪府警が家宅捜索に入った際、男性に暴行したということです。

■「捜査員3~5人に殴られた」と男性ら 他の捜査員らは制止せず
現場となった場所はレンタルオフィスで、当時、部屋には20人以上の捜査員が。
警察によると巡査部長が、捜査対象の男性に対し、腹を複数回殴るなどの暴行。さらに、現場責任者だった警部補が、顔を平手打ちしたり、押し倒したりする暴行を加えたという。
捜査関係者によると、捜査員らが室内にあったスマートフォンの暗証番号を聞き出そうとしたが、男性らが拒否したため、暴行に及んだとみられる。
その後、男性らは、「捜査員3~5人に殴られた」などと弁護人に被害を申告。
2人が暴行を加えている間、他の捜査員らが制止する様子はなかったとみられる。
調べに対し、警部補は容疑を否認する一方、巡査部長は容疑を認めている。
警察は捜査対象の男性らを逮捕しましたが、違法行為があったとして釈放している。

■大阪府警捜査四課とは、一体?
2人が所属する大阪府警捜査四課とは、一体、どういう組織なのか。
大阪府警の中で、1961年に新設された捜査四課。いわゆる「マル暴」と呼ばれる、暴力団が絡む数多くの事件の捜査を担当してきた。
捜査四課長(当時):攻めの捜査ということで、各抗争事件の検挙に全力投球したい。
暴力団による発砲事件が相次いだ1980年。組事務所の捜索で、拳銃を押収することも。
1990年代には、暴力団の弱体化を狙った「暴力団対策法」が施行され、取り締まりをさらに強化。
組事務所の捜索では、どちらが暴力団の組員か分からないほどの迫力が…。
【1999年(山口組系暴力団の捜索)】「開始!」「まだおれへんねん」「こらぁ!」
【2002年(名古屋・弘道会の捜索)】「開けいこらぁ!はよ開け、おらぁ!」
【2013年(山口組幹部の捜索)】「はよ開けえ~!」「同じようなことばっかすんなコラ」
【2019年(姫路・暴力団事務所)】「誰が待てじゃアホんだらぁ」「何をぬかしとんじゃワレ」

その迫力は、時が経っても継承されているようで、7月の家宅捜索では…。
大阪府警の捜査員:開けろオラ!
大阪府警の捜査員:はよ開けろやアホ。
暴力団関係者:どちらでっか?
大阪府警の捜査員:大阪(府警)や!
近年は暴力団に所属しないいわゆる「半グレ」集団や、匿名・流動型犯罪グループ・「トクリュウ」など捜査四課は幅広い捜査を行うようになった。

■「桜の代紋を持ったヤクザやね」と山口組系の元組長
捜査四課は一体、どのような存在なのか。
今回、取材に応じたのは、山口組系の元組長。
山口組系元組長:大阪は”焼き入れる”というイメージです。
(Q.焼き入れるとは?)
山口組系元組長:どついたりとか。調書を自分らの良いように取ろうと思ったら、手はなんぼでも出してくる。
大阪府警の取り調べは、他府県の警察よりも厳しく、容疑者に対して空気椅子を強要することもあったという。
さらに…。
山口組系元組長:取り調べ中にずっと、コンパチ(デコピン)ってあるでしょ、おでこを指でしばくみたいな。あれで片目を、片目の方だけずっとしばいたり。桜の代紋を持ったヤクザやね。精神的な拷問ですよ、痛いけど。
(Q.弁護士に言ったりは?)
山口組系元組長:ヤクザしてる人間は大体言わないです。恰好悪いから。

■「四課のプライド持ってる」と他府県の警察
では、他府県の警察は捜査四課をどのように見ているのだろうか。
他府県警の元暴力団捜査刑事:この人たちは、四課ということにプライドを持って仕事をしてる。昔から伝統があるんじゃないですか。
(Q.今回の大阪府警の事件を聞いてどう思った?)
他府県警の元暴力団捜査刑事:やりすぎたというか、(捜査対象者の)挑発に乗ったのではないか、というのが私の考え。はめられたのでは、と私は思います。

■「捜査としてプロではなかった」「ポシャった」と大阪府警四課経験者
捜査関係者によると、巡査部長は四課に配属されたばかりだったが、警部補は経験豊富で真面目で実直な性格だったということだ。
そんな2人の逮捕について、大阪府警の内部はどう思っているのか、取材に対し、複数の四課経験者は―。
大阪府警元捜査四課:手を出すなんていう文化は無いです。あくまで個人がやったことだと思っています。
元捜査四課 大阪府警OB:昔はガサの時、壁殴ったりとかもありましたが、今の時代、あれはダメです。どこで録音録画されてるか分からないので。
元捜査四課 大阪府警OB:ヤクザと違ってトクリュウが出てきて、捜索含め、取り調べなど難しくなっている部分もあるようです。ただ、今回は捜査としてプロではなかったですよね。
2人の逮捕の発端となった事件捜査への影響を心配する声も。
大阪府警 元捜査四課:女性を食い物にするグループの捜査を頑張ろうとしていたところで、今回の事件でメンバーが釈放されてしまった。捜査はほぼ、ポシャったようなものだと思います。
大阪府警は、防犯カメラの映像を調べるなどして、他にも捜査員による暴行がなかったか詳しく調べている。
(関西テレビ「newsランナー」2025年8月8日放送)
