「大きな過ち」警視庁が冤罪事件の検証結果公表…大川原化工機事件「組織として捜査の基本に欠け」ていたと指摘 幹部ら処分へ

機械メーカー「大川原化工機」をめぐる冤罪事件で、警視庁は、「捜査指揮系統が本来の機能を発揮せず大きな過ちにつながった」などとする検証結果を公表しました。

「大川原化工機」の社長ら3人は、生物兵器製造に転用可能なため輸出が規制されている噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を不正輸出したなどとして逮捕・起訴され、その後、起訴が取り消されました。

東京高等裁判所は、2025年5月の控訴審判決で、警視庁公安部と東京地検の捜査について違法性を認め、都と国に合わせておよそ1億6600万円の賠償を命じ、判決が確定しています。

これを受け、警視庁は、副総監をトップとする「検証チーム」を設置し、捜査書類の精査や当時の公安部長ら幹部や捜査員など47人から聴取するなどしてとりまとめた検証結果を公表しました。

この中では、控訴審判決で指摘された「大川原化工機」の噴霧乾燥機が、経済産業省で定められた輸出規制の要件を満たすとした公安部の解釈に対し、経産省から否定的な見解が示されていたにも関わらず、再検討しなかった点について、「立件に向けて捜査を進めることの適否について慎重な検討がなされるべきであった」と指摘しました。

また、規制対象に該当するかどうかを判断するための実験で、当てはまらない可能性のある供述や捜査員から意見があったにもかかわらず、追加の捜査を実施しなかったことは、「あらゆる証拠の発見収集に努めるという捜査の基本を欠くものだった」とし、「社長ら3人の逮捕は、こうした消極的な要素の精査が徹底されていない問題点も踏まえれば、逮捕権運用に関する基本的な考え方に則っていなかったと言わざるを得ない」と結論付けました。

こうした誤った捜査の原因として検証チームが指摘したのが、「捜査指揮系統の機能不全」です。

今回の捜査の過程では、「立件に向けた消極要素となる情報は公安部長らにほとんど報告されておらず、大まかな概要や予定を伝えるだけの形骸化したものとなっていた」と認定しました。

また、捜査の最高責任者である公安部長ら幹部についても、「積極的に捜査状況を確認して問題点を把握し、捜査方針の当否を検討することをせず、果たすべき役割を果たしていなかった」とし、「公安部の捜査指揮系統の機能不全で組織として捜査の基本に欠け、逮捕したことが違法とされる結果となった」と大きな問題点としてあげています。

警視庁は再発防止策として、捜査状況が幹部に上がっているか、捜査が適切に行われているかなどを中立的に見る公安捜査監督指導室(仮称)の設置を決めました。

また、部下が捜査指揮をとる人のマネジメントや指導について監察を行う「多面監察」を秋にも始める見通しです。

警視庁は、報告書を受け当時の公安部幹部らの処分を公表する予定です。


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