東京電力は福島第一原子力発電所で実施されている処理水の海洋放出をめぐり、放出可否を判断するための「測定・評価対象核種」について、セリウム144(Ce144)を除外すると公表した。
セリウム144の半減期(約285日)を考慮した放射性物質の量の減少などから、除外できるとの判断に至ったもので、2025年度第3回目の放出(通算14回目の放出)から除外するとしている。これまでに放出した処理水中のセリウム144の濃度はすべて検出限界値未満だった。
これにより「測定・評価対象核種」は30から29に減少。これまでカドミウム113が追加されたことがあったが、除外された核種は初めて。
処理水の海洋放出にあたっては、毎回、海洋放出前に「その水を、生まれてから70歳になるまで毎日約2リットル飲み続けても、平均の線量率が1年あたり1ミリシーベルトに達しない濃度」(トリチウムを除く)であることを確認したうえで放出を実施しているが、「測定・評価対象核種」はこれを確認するための対象となる核種。東京電力はセリウム144を除外した後も、引き続きこの核種の監視を行うとしている。
福島第一原発では2023年8月に処理水の海洋放出を開始。
2025年8月3日に通算13回目の放出が完了し、合わせて約10万2,000t(タンク約102基分)の処理水が薄められて海に放出されている。
2025年度は、これまでに海洋モニタリングで異常などが確認されていないことなどから、放出する処理水に含まれるトリチウムの濃度を2024年度よりも高くする方針。東京電力は第一原発周辺海域で海水のトリチウム濃度測定を実施していて、発電所から3km以内で700ベクレルを検出した場合には放出を停止することとしているが、これまでにこの指標に達したことはない。
国と東京電力が掲げる福島第一原発の廃炉の完了は2051年。
タンク内のトリチウムがゼロになるのも2051年とされている。