先月、自身のSNSで妻とのウェディングフォトを公開したの(42)。祝福の声が寄せられる一方、実は反発も招いているようで……。その理由をライターの冨士海ネコ氏が分析する。
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人気YouTuber・はじめしゃちょーや・さんの公開ウェディングフォトが話題だ。当初の祝福ムードは徐々に変調をきたし、「嫁自慢」「浮かれている」といった冷ややかな声も上がるようになっている。
そのわけは、「妻は一般人なので詮索しないで」という雰囲気を出しつつ、SNSで大量のウェディングフォトを公開し続けたことにある。本来ならお祝いすべきプライベートイベントではあるのだが、どこかそこに「お金になりそう」というビジネスの匂いを感じてしまう人もいるのではないだろうか。
藤森さんは妻がかつてリアリティーショーに出演していたタレントであることを明かしたが、1年前に結婚した当初は、「タレント活動をしていた一般人女性」と言うにとどめていた。当時公開された藤森さんのインスタグラムでも、妻はウェデイングベールをつけた後ろ姿の写真のみ。お宮参りの写真でも、妻の顔はアイコンで隠されていただけに、「妻の容姿や過去は詮索しないで」というメッセージだとファンは受け止めていただろう。
しかし妻側はやや違ったようである。というのも、当時から「匂わせ」ではという投稿写真の数々が話題となっていた。藤森さんのもらった花束に似ている花の写真や愛犬の写真によって、「特定」していた人は少なくない。今年に入ってから妻の年齢を藤森さんが明かしていたこともあり、答え合わせができたという声も。藤森家としてはお披露目のタイミングをうかがっていたのかもしれないが、結婚時には隠していたはずの妻の顔もタレント歴も一挙公開、となると、「カップル売り」ビジネスの匂いを感じてしまうのも無理はないだろう。
同じく一般女性と結婚したヒカキンのやり方は正反対 ビジネスに振り切ることで詮索の目をそらした成功例
本当に妻を隠し通したいのなら、最初からビジネスに振り切っていた方がよかったのかもしれない。例えば人気YouTuberのヒカキンさんは2024年1月1日、一般女性との結婚を報告。その際、お相手の顔は一切公開せず、100種類もの結婚報告動画を投稿した結果、600万回以上の再生回数を記録した。完全に「HIKAKINワールド」に落とし込むネタの材料としたことで、視聴者を相手女性そのものよりも「ヒカキンらしい徹底ぶり」に注目させることに成功したといえるだろう。結果として、妻の素性を特定したいという目をうまくそらし、祝福ムードを独占した。
ヒカキンさんのやり方は、結婚をあくまでもビジネス上の企画として扱ったもの。プライベートとパブリックの境界をあえて消し去り、「全部笑いと驚きに変えてしまう」ことで、批判の芽を摘んだのだ。
一方で藤森さんやはじめしゃちょーのように、妻の顔や経歴は隠しているのに連日ウェディングフォトを投稿したり、急に顔出しを始めたりすると、「そっとしておいて、という発言は真意ではなかったのかもしれない」と視聴者が思うのも当然だ。
大量のウェディングフォト投稿は、単なる結婚報告以上の意味を持つ。「祝福の可視化」「幸せの演出」を狙った戦略であり、コメントや「いいね」の数が増えるほど、単なる私的な出来事が「パブリックコンテンツ」へと昇華される。それはインフルエンサーとして活動する芸能人にとって、ブランド価値維持や拡散戦略としても有利に働く。
プライベートだから、妻のことは放っておいてほしい。でも、投稿に対してコメントやいいねはたくさんほしい。承認欲求をお金に替えるアテンションエコノミーが根付いた今、そうした姿勢はどっちつかずのいいとこどりに見えるだろう。今後の企画や活動への注目度を上げるための「前フリ」だと、思われても仕方ない部分はあったのではないか。
「トロフィーワイフ」への視線の変化も? 「見せ過ぎ」の恋愛・結婚投稿に対し広がる拒絶反応
また世間の微妙な空気の背景には、藤森夫妻が15歳差ということへの戸惑いもあったかもしれない。結婚をプロモーションツールとして使う女性芸能人は少なくないが、男性側が意図的に妻を「見せる」ケースで多いのは「トロフィーワイフ」としての若妻自慢だからだ。
はじめしゃちょーも結婚発表の直後、「妻は10歳年下の女子大生インフルエンサーでは」といううわさがSNSを駆け巡った。こうした疑惑が出るのを見越し、はじめしゃちょーは動画内で「YouTuberやインフルエンサーとかではなく、芸能活動などをしていない女性」と説明していたのものの、何枚も投稿された写真を見れば若々しくかわいらしい雰囲気の女性だということは十分に伝わってくる。やっぱりお前も若い美人妻自慢かと、うがった見方をする人が出てくるのは避けられない。
かつては「金持ちの男性が若い妻と結婚する」ことは男性にとっての「夢」でありステータスだったが、昨今では、男性側の財力と女性側の若さの交換、と言わんばかりの結婚には、祝福どころか反発の声が上がりやすくなっている。
SNS上では「見せ過ぎ」の恋愛・結婚投稿に対する拒絶反応も広がっている。「見せてほしい」「でも見たくない」といった複雑な心理が入り交じり、祝福も批判も「リアクション」として消費されていく。こうした状況で、芸能人が結婚を題材に続々とコンテンツを投下するのは、ある意味で「あえて炎上することで存在感を保つ」手段にもなっていくのだろう。「見たい」「見られたい」、そして「祝われたい」が交差する有名人のウェディングフォト投稿。その中で光っているのは赤い糸でつながった薬指の指輪ではなく、赤字を回避する現実のそろばんなのかもしれない。
冨士海ネコ(ライター)
デイリー新潮編集部