女優の(26)が8月5日、芸能事務所「フラーム」へ移籍したことを発表した。同事務所には有村架純、戸田恵梨香、吉岡里帆ら人気女優が所属。今後はこれまで以上に演技方面へとシフトしていくと見られている。
長濱といえば、7月に発売された8年ぶりとなるセカンド『』(講談社)も話題だ。売れ行きは好調で、発売初週で4.8万部を売り上げ、オリコンのランキングでも2週連続で1位を獲得している。ただAmazonレビューは10日現在、星2.6。星の内訳を見ると星1つが48%と半数近くの人が最低点をつけ、批判的な言葉が数多く並ぶ。売り上げとは対照的な状況になっている。
の中に居たのはアイドルではなく――
の購入者はどのあたりに不満を感じているのだろうか。全レビューを分析すると大きく「構図など写真そのものへの不満」「露出に関する不満」「前作との内容の差」という3つの不満が見えてきた。
(1)構図などそのものへの不満
低評価のレビューで目立ったのが「引きの絵ばかり」「引きだらけ」といった写真の構図に関する不満だ。確かに引きの写真が多いが、これはカメラマンを務めた高橋ヨーコの作風と言える。
高橋は国内外の風景やそこに根づく人々の営みを切り取ってきた写真家だ。蒼井優、綾瀬はるか、高畑充希らの女優のをいくつか手掛けているが、それらのでも寄りのカットや“キメ顔”は少なく、スナップ写真のような女優のリラックスした自然な表情が中心で旅の空気や自然体を重視してきた。この作風が、長濱だけを見たい読者にとってはかなり不満を覚えたようだ。
今回の高橋の起用は、ファンならご存じのように長濱たっての希望だ。長濱は、蒼井優を撮った高橋の『トラベル・サンド』(ロッキング・オン)について”私のバイブル”と語っており、FRaUのインタビューでは「ヨーコさんありきのだったので、もしもお断りのお返事をいただいていたらの出版自体なかったかもしれません」とまで語っている。
本作は“の”というより、“高橋ヨーコ作品への出演”に近い。筆者はロードムービーのようなが好きなためこのを楽しめたが、逆に楽しめない人がいても当然だと考える。それは好みの差だからだ。ただ好みに合わない=低評価という判断は短絡的に映る。
(2)内容・露出に関する不満
で長濱の水着が少ないことや、露出が少ないことに言及するレビューも多い。ただ筆者は酷評レビューを見てからを購入したのだが「えっ、意外に水着も露出も多くないか?」と逆に驚いた。水着については3着、下着が1着、他にも身体のラインを見せたキャミソールなどもある。それでいえば今作は読者へサービスしようとしているように見えた。
一方で水着であっても引きのカットが多い。グラビア的なポージングも皆無だった。長濱の水着や肌を堪能したいという欲求を叶えるものとしては失格なのかもしれない。
露出不満が目立つ一因は、宣伝と中身のズレだ。ではPRのために先行カットを雑誌やSNSで展開するのが普通だ。今回の「」の宣伝では水着や下着など肌があらわになるカットが多く、キャッチコピーにも「女性が憧れるの『バブみボディ』を美しい写真でお届け」と男性読者の期待を煽る文句も並んだ。
はビニール包装で中身を確認できず、事前宣伝が購入判断の大きな要因になる。今回は水着や下着を強調した先行カットで期待が高まったが、実際の本誌の内容は宣伝カットとほぼ同じ内容で、ギャップが失望を招いた。そして失望がやがて怒りへと変わり、SNSやレビューにぶつけられた。
出版社はアイスランドやフィンランドでのロケ費用もかけており、売上は重要だった。そこで水着カットを前面に出して購買を促したのだろう。ただ、宣伝内容と実際の中身をもう少し揃えてもよかったと感じる。
ただ、長濱は欅坂46を卒業して6年以上が経ち、「news
zero」の火曜日レギュラーを務めるポジションだ。現在の仕事を考えれば水着のグラビアをやらずともよく、一部男性を喜ばせる露出や衣装などは望むべくもない。その中でも事前の煽りほどではないにしても、水着や露出などサービスカットはあった。今回の露出は妥当な落とし所だったと考える。
(3)前作との内容の差
そして最後は長濱が8年前に出したファースト「ここから」と比べて、期待外れだったという声である。
人気アイドルのを多数手がける細居幸次郎が撮影した前作「ここから」(講談社)はクリアな画質、長濱の水着が堪能できるグラビア的な写真カットやアップの写真に、デート気分が味わえるカメラ目線と男性のアイドルファンが望む長濱の姿が収められたアイドルの傑作だった。今回のとは真逆の作品で、その分失望も大きかったのだろう。
どちらも長濱との旅行を味わえる写真だが、細居「ここから」は長濱との恋人気分が味わえる一方、高橋の「」は女友達との旅行気分が味わえる。同じ被写体、同じ旅を思わせるでも真逆の味わいがあって面白い。
「タトゥー」を読み解くと
長濱のと、レビューの反応を見て感じるのは、長濱に変わらないでいてほしいと願うアイドルファンと、変わっていこうとする、もしくは本来の自分の姿を見せようとする長濱とのずれだ。
アイドル時代の長濱はおとなしく聡明で、でもどこか儚げという男性が望む理想像だった。一方でエッセイ「たゆたう」などで垣間見える長濱の内面は、意外に毒を吐くなど等身大の普通の女性であることがわかる。同エッセイではアイドル時代について「周りに見えている自分と、私が知っているはずの自分がどんどん乖離していった」と振り返っており、実際の自分とのずれを感じていたようだ。
今回のでは長濱の脇近くにハートのタトゥーがあったことも大きな話題を呼んだ。アイドル、とりわけ清楚なイメージもあった長濱のタトゥーについては「嫌いになった」など否定的な声も上がっていた。一部の研究では、タトゥーは自己像とのギャップを埋める手段になるとされる。今回のタトゥーも、世間的イメージと異なる自分を見せたいという長濱の意志にも感じられた。
8年前の「ここから」では写真からも感じられた不安、所在なさげな儚さが、今回のには感じられなかったのも印象的だった。そこにいたのはアイドルではなく、成長し自立した女性の姿だった。自分の名前を冠したの長濱こそ、今の自分、今のみんなに知ってもらいたい自分なのだろう。
アイドルとしての長濱が好きな人には受け入れがたい作品であり、好き嫌いも分かれるだろう。ただ星1一色で片づけるような駄作ではない。被写体の現在地を考えれば、興味深い作品と言える。
徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい!
アイドル&グラビア名作ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:@tatsunoritoku
デイリー新潮編集部