「約19.2秒ほど見ていただいた」
学歴詐称問題を追及されている、伊東市の田久保真紀市長(55)が8月13日、ついに市議会の百条委員会に初めて出頭した。百条委員会は理由なく出頭を拒否したり、嘘の証言をしたりした場合には刑事罰がある。
これまで田久保市長は、東洋大学を卒業したと広報誌に載せていたが“除籍”されていたことがわかっており、本人もそこは認めている。しかし当選後に議長らに見せた“卒業証書”が本物だったのか偽物だったのか、ここが焦点だ。
議長らは
「チラ見せだった」
と主張したが、この日百条委員会では田久保市長は
「約19.2秒ほど見ていただいたと記憶している」
と発言すると会場がざわつき失笑する委員の姿もあった。
証人喚問終了後の囲み取材で田久保市長は、議長との会話を録音しているとし、19.2秒の数字については
「ストップウオッチで計りました」
と明かした。
あの手この手でボロを出そうと質問する委員も必死だ。
「金庫の中の市長の言う“本物の卒業証書”を東洋大学に持っていき大学を追及するべきではないか」
という質問に対しては、田久保市長は
「大学は非常に親しみがあって愛着のある学び舎なので、大学とは対決姿勢で話し合いはしたくない」
とかわした。さらに
「東洋大学の本物の卒業証書は見たことありますか?」
と問われると、田久保市長は
「見たことがありますかということに関していえば、私は見たことはありません」
と答えた。
刑事告発はいつでも取り消すことができる
「“本物の卒業証書を見たことがない”と答えている時点で自分が持ってきた卒業証書は“本物ではない”と自白しているのと同じですよね。田久保市長の問答を聞いていると会話がかみ合わずイライラするという声をよく聞きます。ただ世間の“見ていて腹が立つ”、“絶対に嘘をついているはずだ!”という感情は視聴率につながりますからね。テレビマンとしては“疑惑のニューヒロイン”誕生と、局内では盛り上がっていますよ」
そう話すのはある民放テレビ局のワイドショー関係者だ。
「これまでも田久保市長の疑惑を放送すると、ポンと視聴率が1%以上上がっていました。今回は『約19.2秒ほど』なんていうキャッチーな言葉が飛び出した。そもそも“約”というなら19秒、もしくは20秒でしょう。どこまでの小数点以下を端折ったのか(笑)。これらをどう面白く編集するかが腕の見せ所。伊東市民のことを思うと気の毒ですが、我々としてはもっと田久保市長には居座ってもらいたいというのが本音ですね」(同・ワイドショー関係者)
だが、テレビマンの感覚とは違い、世間の感情は怒り心頭のようだ。
伊東市内にある建設会社の社長が公職選挙法違反の疑いで告発状を提出し、7月28日付で警察が受理した。さらに7月31日には千葉県に住む公務員の男性が有印偽造私文書等行使と虚偽公文書作成および同行使の疑いで田久保市長を刑事告発した。
兵庫県の斎藤元彦知事も刑事告発されているが、あまり捜査に進展があったというような発表は聞こえてこない。政治家や首長などの捜査がなかなか進まないことについて、『森實法律事務所』の森實健太弁護士は
「政治家だからというよりは、第三者から告発を受けた事件を捜査するために割く人員や時間が、警察のなかで物理的に不足していることが大きいでしょう。そもそも刑事告発はいつでも取り消すことができるため、仮に取り消されるとそれまでの捜査が無駄になる可能性がある。その慎重さもあり、捜査が進んでいない印象を持ってしまうのかもしれません。なお、起訴するか否かは検察官が決めることで、仮に捜査がされても証拠が不十分な場合などには起訴猶予や不起訴になることも一定数あります」
と語る。
果たして田久保市長の騒動は、テレビ局の思惑どおりに長引くのだろうか――。