長野県内の宿泊施設などで小型カメラを設置し、女子学生を盗撮した罪に問われている元信州大学の准教授の男の初公判が長野地方裁判所松本支部で開かれた。男は「間違いありません」と起訴内容を認めた。検察側は「自身の性的欲求を満たすために行った動機や経緯が卑劣かつ身勝手である」などと指摘し、懲役1年10カ月を求刑。一方、弁護側は「本人と妻に謝罪弁償の意思があり、再犯しないよう妻が監督を約束している」などとし、執行猶予付きの判決を求めた。
着替え中の様子を…
性的姿態等撮影の罪などに問われているのは、信州大学の元准教授の有路憲一被告(51)。
起訴状などによると、有路被告は2022年6月に信州大学の女子学生に対し、「妻が着なくなった服を譲る」などと話し、長野県松本市の信州大学松本キャンパス内にある多目的トイレで試着を勧め、あらかじめ設置していた小型カメラで着替え中の様子を盗撮。

2022年9月下旬には、女子学生2人を京都旅行に誘い、宿泊施設の浴室や脱衣所に設置した小型カメラで着替えや入浴の様子を盗撮したほか、2024年6月には、同様の手口で長野県佐久穂町の宿泊施設で、女子学生を盗撮したとされている。
情状証人として被告の妻が出廷
8月7日、長野地方裁判所松本支部で開かれた初公判で有路被告は、「間違いありません」と起訴内容を認めた。
裁判では、情状証人として被告の妻が出廷し、弁護士からの尋問に答えていた。

弁護士:
「逮捕を知ってどう感じましたか?」
妻:
「警察が来て、それまで全く気づけず、その時初めて知りました。とても混乱しました」
弁護士:
「(被告は)どんな風に仕事をしている印象でしたか?」
妻:
「教員として真面目に働いていたと思います」
弁護士:
「どうしたら再犯を防げますか?」
妻:
「郵便物、ネットで購入したものをきちんとチェックして、PC・スマホの履歴もチェックしていきたいです。不審な点があったらその時点で本人に聞くようにします」
妻:
「直接(被害者に)謝罪できればいいですが、難しいので再犯をしないよう、監督していくことが謝罪に繋がると思います」
被告人質問 盗撮のきっかけは…
妻への尋問のあとは、被告人質問が行われた。
弁護士:
「盗撮したきっかけは?」
被告:
「2019年頃に学生と行ったゼミ合宿の宿泊施設にカメラが設置されているのを見つけたことがきっかけです」
弁護士:
「振り返って、盗撮する動機は?」

被告:
「背景として、幼少の頃、B型肝炎を患い、20歳ごろに感染していることに気づきました。その頃から相手にうつらないよう、性交渉が怖くなり、行為が出来なくなりました。そのことから鬱屈とした欲があり、(2019年に)カメラを見つけたことで興味を持ち、欲に倫理観が勝てずに行為に及びました」
弁護士:
「二度としない?」
被告:
「多くのものを失いました。それでも支えてくれる人がいるので、裏切るようなことは二度としません。覚悟を持っています。このようなことは二度としません」
検察側「卑劣かつ身勝手」と指摘
一方、検察からも尋問が行われ―
検察:
「ほかの方法で発散できなかったのですか?」
被告:
「若いころから性を発散することが難しくて、ほかに方法がありませんでした」

検察:
「盗撮した画像で欲が満たされていましたか?」
被告:
「何度も見返したりはしていませんが、盗撮したその瞬間に欲が満たされていました。その後、激しい嫌悪感もあって後悔はしていました」
7日の初公判で検察側は「自身の性的欲求を満たすために行った動機や経緯が卑劣かつ身勝手である」「再犯の可能性を否定できない」などと指摘し、懲役1年10カ月を求刑。
被告「深く深く反省しています」
一方、弁護側は「前科前歴がない」「本人と妻に謝罪弁償の意思があり、再犯しないよう妻が監督を約束している」などとし、執行猶予付きの判決を求めた。

有路被告は「被害者と家族に深くお詫び申し上げます。毎日心の中で、謝罪を繰り返してきました。信頼して関わってくれた人にも申し訳ない気持ちです。罪を償い、信頼を取り戻せるようにしていきたいです。傷つけたこと、裏切ったこと、言葉では言い尽くせない気持ちでいっぱいです。深く深く反省し、二度とこのようなことがないよう、心からお詫び申し上げます」と話した。
裁判は即日結審され、判決は9月17日に言い渡される。
(長野放送)