大阪市阿倍野区に、心霊スポットとして夜に人が集う場所があります。
大阪市内に広大な敷地を構える「正圓寺(しょうえんじ)」。
平安時代に創建された歴史ある寺です。
【記者リポート】「草の背丈が私くらいあって、管理がされていないそのままの状態になっています」
去年の末から住職が不在となっていて、境内は荒れた状態に…。
さらに、“ある”違法行為も横行していました。
【オフリポ】「光が見えますね。不法侵入しているとみられます」
心霊スポット化し、不法侵入が多発!
【檀家女性】「本当に残念、悲しいですすごく」
「newsランナー」が緊急取材で、由緒正しい寺で何が起きているのか、その背景と実態に迫りました。
■「心霊スポット」としてSNSで口コミ
平安時代に創建されたと伝えられる大阪市阿倍野区の古刹「正圓寺」。
「徒然草」の作者・吉田兼好にもゆかりがある由緒正しい寺で、地元では“天下茶屋の聖天さん”として長年、親しまれてきました。
しかし今、近隣住民の多くが寺に“ある”危機感を抱く事態に。
それが…「心霊スポット化」。
【近隣住民】「結構、治安悪くなっている気がするなって、話題になってたりして。できるだけ近寄らないようにしている」
【近隣住民】「とってももったいないことやと思います。有名なお寺さんやのに」
警察などによると、寺の敷地内にある建設途中の巨大な建物が「心霊スポット」としてSNSなどで口コミが広がり、何者かによる不法侵入が後を絶たないということです。
なぜ、手付かずのまま放置されているのか。
取材班が寺を訪ねると…。
【記者リポート】「草の背丈が私くらいあって、管理がされていない、そのままの状態になっています」
境内の管理は行き届いていない様子で、住職はおろか関係者の姿も見当たりません。
■ことの発端は住職の“逮捕”
この寺では一体、何が起きているのか。ことの発端は2年前にさかのぼります。
当時住職だった辻見覚彦受刑者(58)。
2023年、逮捕・起訴され、その後、大阪高裁の懲役2年6カ月とする実刑判決が確定しました。
事件の引き金となったのが敷地内にある巨大な建物。
元住職は赤字経営の寺を立て直す秘策として、敷地内に「特別養護老人ホーム」を建てようとするも、大阪市に虚偽の申請などをしたことから、建設が途中でストップしたのです。
■いつの間にか“心霊スポット” 不法侵入の多くが未成年
これらのことから、住職不在の「無住寺院」となってしまった「正圓寺」。
建物は荒廃が進み、夜になると異様な雰囲気を放つことから、いつの間にか心霊スポットとして知られるように…。
一体、どのような人物が建物に忍びこむのか。取材班は、張り込み取材でその実態に迫りました。
【記者リポート】「今、警察官が寺の敷地内に入っていきました」
午前0時30分ごろ、警察も警戒を強める中、取材班はあるグループの姿を捉えました。
【記者リポート】「今、子供たちが正圓寺の方へ入っていきました。ロープを越えて、寺の敷地内へ入りました」
その後、敷地内を出たり入ったりと、落ち着かない様子の少年たち。
【記者リポート】「どこから入ろうか、探しているのでしょうか」
そして、少年らが暗闇に消えたおよそ4分後のことでした。
【記者リポート】「光が見えますね。恐らく先ほどの少年たちが中に入っていると思われます。不法侵入しているとみられます」
取材班は、建物の2階に複数の光を確認しました。
敷地内から出てきた少年らに記者が駆け寄ります。
(Q.今、特養の中に入ってなかった?)
【少年】「どこですか?」
(Q.建物の中、廃墟になった)
【少年】「いや…」
(Q.入ってない?)
【少年】「はい」
(Q.さっき建物の2階がライトついてて、その前に君たちがうろちょろしてたから)
【少年】「してないですね」
(Q.ホンマに違う?)
【少年】「違います」
「自分たちは侵入していない」と、足早にその場をあとにした少年たち。
警察によると不法侵入の多くが未成年で、ことし5月以降、あわせて13人を補導したということです。
■建物内部は危険な場所も 何者かが侵入した形跡
不法侵入が相次ぐ建物の内部はどのようになっているのか。
4日、管理者の許可を得て取材班が内部に入りました。
【記者リポート】「壁にはスプレーなど落書きがされていて、窓が割れた状態で、明らかに人が入り込んだ跡が残っています」
【記者リポート】「寝袋のようなものも放置されています」
地上4階建てですが、どの階にも何者かが侵入したとみられる痕跡がありました。
建物内部には、いたるところに危険な場所も…。
【記者リポート】「柵もなくて、1階まで吹き抜けとなっています」
この建物を管理する男性は、困惑の声を漏らします。
【建物の管理者】「警察の方も毎日パトロールに来ていただいて。(建物の)中に入られることが犯罪ですし、器物破損になる。もう侵入はやめてほしい」
■後継者不足で増える“空き寺” 仏像の盗難も
住職が不在の間に横行する違法行為。
寺院を調査する専門家は、「正圓寺に限った話ではない」と指摘します。
【大正大学 鵜飼秀徳招聘教授】「空き寺っていうのは、どんどん増えている。これはお寺の後継者がなかなか見つからないということが原因」
さらに、住職が不在の寺では、別の問題も発生すると言います。
【大正大学 鵜飼秀徳招聘教授】「空き寺を狙って仏像の盗難。様々な仏具などの盗難。こうったことも相次いでいる」
■檀家離れも加速 檀家は「落胆している」
正圓寺が心霊スポットとなっている現状に、檀家の女性は「落胆している」と話します。
【正圓寺の檀家】「本当に残念、悲しいいです、すごく。最初の頃は、本当に怒りしかなかったんですけど、多分、怒りに慣れっこになってしまっているのか、本当に毎日のように(不法侵入が)あるので、諦めになっている」
心霊スポットとなり、檀家離れが加速する正圓寺。
再建は困難な状況です。
(関西テレビ「newsランナー」2025年8月5日放送)