
スター・ウォーズのあの建物、実在するんです!
批評家からも絶賛の嵐。
ディエゴ・ルナ主演のスター・ウォーズ実写ドラマ最終作『キャシアン・アンドー』シリーズ2が先月、ファンに惜しまれながら最終回を迎えました。
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本作は前作『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー 』の前日譚。反乱に加わった元泥棒の主人公が逃げながら帝国反乱軍の首魁ルーセン・レイエル(ステラン・スカルスガルド)の破壊工作員として生きる姿が描かれています。
脚本・演技・舞台演出のすべてが好評で、シーズン2ではその魅力を余すところなく味わえます。
農耕惑星ミーナ・ラウの風そよぐ麦畑から、コスモポリタンで荘厳な佇まいのゴーマン・プラザ、都市惑星コルサントの全土を埋め尽くす摩天楼まで、息呑むシーンの連続で、とりわけコルサントの描写は出色です。
コルサントが初登場したのは1997年『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』再リリースのとき。きらめく高層ビル群、ブルータリズム建築の支柱、空駆けるホバークラフトが果てしなく連なる様子などは前編三部作のままなのですが、本作ではこれまで見たどのシーンよりも解像度高く描かれていて、手で触れられるように感じました。
この風景のモデル
それもそのはずで、コルサントにはモデルとなる建造物があるんです。わかりやすいのはスペインのバレンシアにある芸術科学都市。上のシーンなんて瓜二つです。
制作デザイナーのルーク・ハルにお話を伺ったら、なんでもシーズン1制作中にイメージに近い建築を探してサンティアゴ・カラトラバやザハ・ハディドに目をつけといて、シーズン2の制作に入る前にヨーロッパ中をロケハンして回ったとのことでした。
回った先はパリ、バルセロナ、マドリード、ポルトガルなど。参考程度のものもあれば、あまりにもイメージに近くて「わーここで撮影できたらなー」と思っちゃうものまでありましたが(まだシーズン2の大枠が決まってなかったのでそれはできない相談だったけど)、バレンシアで目にしたのは「アッパーコルサント」そのものの光景でした。
この芸術科学都市。設計したのはサンティアゴ・カラトラバとフェリックス・カンデラです。1957年の大洪水のあと旧トゥリア川の迂回工事が行なわれて川底が干上がっていたところに再開発されました。 スペイン最大の映画館兼プラネタリウム「ヘメスフェリック」(1991年着工、1998年オープン)を皮切りに拡張を続け、2009年竣工のアゴラプラザをもって完了した文化複合施設です。総面積35万平方m。
「中をぐるりと歩ける辺りが本当にコルサントみたいなんだよね」とILM視覚効果スーパーバイザーのモヘン・レオンさんもStarWars.comのインタビューで言ってますよ。
いろんな建物がひしめいているわけですが、上の白いスケルトンっぽいのはフェリペ皇太子科学博物館。シーズン2第9話のモン・モスマ上院議員救出作戦で出てきます。ほかにもソフィア王妃芸術宮殿は資産家ダヴォ・スカルダンの高層住宅だし、モントリヴェ橋はルーセン・レイエルと秘密警察ISB潜入スパイのロ二・ヤングが最後に会う舞台として使われています。
先述のハル氏によれば、ソフィア王妃宮殿は玄関先をヘリポートっぽく使えるのがすごく気に入ったらしくて、
リムジンの高度を下げていくとコルサント全市が見渡せるし、ガラス張りなので中のパーティーも見えて、ほんとに華やか。ボンド映画みたいなんだ。こんな掘り出し物そうない。やっぱりロケ撮影はいいよね。CGIでスケール感は表現できるけど、スコープ的な広がりは出せないこともあるからね。
と仰ってました。
衣装にもこだわりが
同様のこだわりは 元老院の人たちの衣装デザインにも見られます。この独特な元老院議員の服は衣装デザイナー、マイケル・ウィルキンソンがルーク・ハルと二人三脚で考案したもの。ウィルキンソンに取材してみたらこう語っていました。
コルカントは元老院に多種多様な人々が集う場所。すぐ顔と名前が一致しないと視聴者がついてこれないので、元老院議員をピラミッドの頂点に位置付けて、それぞれの出身地の文化を代表する存在と捉えて、それを衣装でも表現したつもり。元老院には普通に働く職員もいる。官僚、議員秘書、事務方などだけど、その人たち用には議員ほど目立たない仕事着も要るし、警備員には制服を用意して、記者や外部の様子を報告する人用にはそれ用の服装も用意した。
バレンシア芸術科学都市がロケ地に選ばれる理由
バレンシア芸術科学都市はSF作品では割と頻繁に目にするロケ地で、ドラマ『ウエストワールド』のDELOS本社にも使われているし、2015年の『トゥモローランド』や2017年の『ドクター・フー』にも登場していたりします。
これだけ愛される理由についてハルに尋ねたら、やっぱり複合施設の構造に対するカラトラバのビジョンの広さと多様なものを受け入れる懐の広さに負うところが大きいとの回答でした。
何から何までがSF世界。これだけのスケールでありながら統一感があって、一貫したビジョンもある。だからいかようにも応用が効く。建物単体ならともかく、これだけのスケールでそんな舞台が広がる場所はそうない。本当にスターウォーズのイメージそのものなんだ。カラトラバが設計したものはすべて未来から舞い降りたものに見える。だからそういうタイプの監督や作品が引き寄せられるんだろうね。
ちなみに本稿の調べ物の途中で気づいたことなんですけど、スペインでは2005年のスターウォーズの日(5月4日)にファンがここに集まって『スターウォーズ エピソード3/シスの逆襲』劇場公開前イベントが行なわれていたみたいなんですね。
まさか20年近く経ってからここがスターウォーズの舞台に使われるなんて、ファンは思ってもみなかっただろうなあ。なんか遠い遠い銀河の果てで起こったことが今ごろになって届いたかのようで、フォースを感じます。
satomi