が選んだ「不倫映画」ベスト10
不倫映画――。そんなジャンルがあるわけではないが、禁断の恋愛をテーマにした映画は世界中に数多(あまた)ある。なぜ、人は不倫映画を観たがるのか。
「不倫は映画と相性がいいんですよ」
そう語るのは、映画コメンテーターの(49)だ。有村といえば、かつてFRIDAY記事による浮気未遂発覚で世間を騒がせたこともある。
「映画って2時間の″if″を楽しませてくれる娯楽。もし自分が銀行強盗だったら、スパイだったら。やってみたいんだけども現実ではできないことを、主人公になった気分で楽しむ。不倫映画が人気があるのは、根本には不倫をしてみたいという願望があるからなんですね(笑)」
そう語る有村に古今東西の「不倫映画」の中からベスト10を選んでもらった。
「結果的に日米の不倫における違いっていうのが明らかになりましたね。日本の不倫は湿度が高い。対してアメリカはドライなんですね」
それではさっそくベスト10を見ていこう。堂々1位に選ばれたのは、世界中で大ヒットした『マディソン郡の橋』。
「あえてこれを1位にもってきた意味は、結婚を卒業するという選択肢を描いていると思ったから。メリル・ストリープ演じる母親が、旦那と成長した子供たちと田舎町で暮らし、もう夜の生活も何もない。ただ毎日、平凡な主婦としての単調な生活を送っている。そして家族がちょっと隣町まで行った時に、カメラマンのクリント・イーストウッドがふらっと現れるところから情事が始まります」
有村は、ラストシーンが観る者の心を揺さぶると言う。
「最後、雨がバシャバシャ降るなか、カメラマンのトラックが去る場面。ヒロインの乗った車は、その後ろにいて、隣の運転席に旦那がいる。今、このドアレバーを引けば彼と一緒になれる。あのシーンはもう本当に映画史に残る名シーンです。そこがこれからの超高齢化社会、人生100年時代に向けたテーマになるんじゃないかと思いましたね」
宮沢りえの演技は異次元
続いて第2位に選ばれたのが、宮沢りえ主演の『紙の月』。
「実際にあった女性銀行員による巨額横領事件に着想を得てるんだけど、宮沢りえさんがすごすぎる。本当に人間ってちょっとしたことが麻痺してくると、何億円というお金を動かしても、何も感じなくなっていくということをよく2時間で描いたなって思います。
共働きの夫婦で夫婦生活はもう冷めてる。そんな日々を送るなかで、とあることで顧客の預金に手をつけて、銀行にバレないと知る。ちょうどその頃、年下の大学生と知り合い、逢瀬を繰り返していたが、次第にお金が足りなくなって、小切手を偽造したりするようになる。男に溺(おぼ)れていくなかで、宮沢りえさんもどんどん綺麗になっていく。巧みな演出、見事な芝居はちょっと異次元でしたね。この映画もそうでしたが、日本の不倫映画って最後は自滅で終わるんですよ。そこがアメリカとは違うんですよね」
3位には、意外な作品が飛び込んだ。同性愛を描いた『キャロル』だ。
「この映画を観た時にやられたなと思いました。ついにレズビアンもの、さらに不倫の掛け合わせが来たか、と。舞台は1950年代のニューヨーク。当時、レズビアンやゲイの人たちはカミングアウトすらもできなかった時代。ケイト・ブランシェット演じる貴婦人は、旦那もいて、娘の親権で揉(も)めている。『お前、不倫してんのか』って夫に言われても、まさか相手が女性とは思わない。そこに盗聴器が仕掛けられる。女同士の関係がバレたらなおさらヤバい。そこから二人の逃避行が始まるっていう話。ぜひ、ちょっと毛色の違う不倫映画も見てほしいですね」
続いて第4位に選ばれたのが、東電OL殺人事件を題材にした園子温(そのしおん)監督による『恋の罪』だ。
「園子温監督のすごいのは、再現ドラマに留まらなかったってこと。普通のOLが夜は娼婦をやってるっていうところから着想を得て、物語をどんどん膨らませていったのがすごい。従順な妻が性の奴隷になってゆく。冒頭で愛人とのセックスシーンで出てくる水野美紀のフルヌードも話題になりましたね」
渡辺淳一原作の『愛の流刑地』が5位に入った。
「これぞ渡辺淳一のドロドロの世界観です。寺島しのぶさんがバンバン脱いでる。トヨエツ(豊川悦司)がかっこよかった。長谷川京子さんが検事役なんだけど、無駄にエロい。それも印象に残りましたね(笑)。結局、渡辺先生の作品のすべてのテーマとして言えることは、不倫は最後は『死』になるか、もしくは美しいまま終えたいってこと。だから、彼女が『私を殺して』と言いながらもプレイとしてやってたんだけど、結局ちょっと力が入って、本当に死んでしまう。そこから始まる裁判劇。これが日本の’90年代からある不倫映画ブームの一つの潮流を決定づけた」
6位の『危険な情事』はあまりに有名。
「これはほんとに王道ですよね。要は不倫した側の女性が、結局私のことは遊びだったのねと気づき、執拗につきまとう。男性側の子供と一緒に遊園地に遊びに行くシーンとか背筋が凍りました。ただのサイコパスなんですけど。久しぶりに振り切れた映画を観た気がしましたね」
7位にはあの『失楽園』が入った。
「『不倫』と言われてパッと思いつく映画。綺麗でしたね、黒木瞳さん。今観ると、ちょっと古典的な感じもしましたが、あの時代はあれで良かったのでしょう」
上戸彩の大胆な演技に魅了
8位は上戸彩の『昼顔』。人気テレビドラマの3年後を描いた作品だ。
「上戸彩さんは、この作品で不倫する役をやったことで、大胆に女優としての位置を確立しましたね。不倫が発覚し、裁判で何メートル以内に近づいちゃダメという判決が出て、その3年後が舞台。上戸演じる紗和が地方で一人暮らししていて、そこに不倫相手の北野(斎藤工)が講演のために訪れる。で、紗和は講演会に行ってはいけないと思いながらも、行ってしまう。そこで目が合う二人、主題歌が流れる(笑)。言葉を交わしてはいけないという裁判での取り決めがあって、その足かせがちょっと余計にエロい。バスに二人で乗るんだけど、会話しちゃいけないから、曇らせた窓ガラスに指で文字を書く。ツッコミどころ満載でしたが、十分楽しめるいい映画でした」
9位は『ゴーン・ガール』。
「いや、これはもう、サスペンス映画でしたね。妻が旦那に復讐する話。ある日、奥さんが失踪し、台所に血痕が残され、旦那が疑われる。実は、失踪した奥さんは生きていて……。監督はデヴィッド・フィンチャー。だから難解なパズルみたいなストーリーでわかりづらいけど、このモヤモヤした気持ち悪い感じが僕はすごく好きなんです」
10位には、昨年末に亡くなった中山美穂主演の『サヨナライツカ』。
「美穂さん、綺麗でしたね。自由奔放な女性と、婚約者を残して赴任してきたエリートビジネスマンの25年に及ぶ愛を描いています。映像がすごく綺麗で、異国情緒溢(あふ)れるシーンを見事に切り抜いており、二人の高揚感も描けています」
有村さんに10本選んでもらった感想を聞いた。
「時代時代を映画で切り取ると、不倫の考え方、潮流が10年ごとに変わってきていることを感じますね。
私もかつて間違いをやってしまった側として、他人事とは思えない感覚で観てたわけですけど。結局不倫自体は、本当に良くないことなんですが、映画館に皆、求めて行っている。不倫映画は永遠に不滅だと、僕は思います」
不倫映画も、思わずときめくものからドロ沼不倫まで、作品内容は幅広くある。その時々の気分に合った映画で、夏を楽しんでほしい。
『FRIDAY』2025年8月22日・29日合併号より