8月2日に放送された『芸能人が本気で考えた! ドッキリGP』での、お笑い芸人・の言動が議論を呼んでいる。
簡単に流れを説明しよう。同番組では、「の愛犬を逃がしてしまうドッキリ」を仕掛けられることに。番組スタッフのミスというていで、は焦りながら犬の捜索を行うことになる。その道中、犬を盗んだ疑惑があるとされた男性(エキストラ)に強い口調で迫ったり、責任をなすりつけようとするスタッフに対していらだつ素振りを見せたりと、普段のでは考えられない鬼気迫る表情を見せた。
この騒動により、残念ながらは好感度を下げることになってしまった。ただ、彼女だけが悪いと断罪するのは、あまりに手厳しい判断のように思える。
◆ドッキリ番組は消滅するかも?
ドッキリ番組は難しい立ち位置だ。5年ほど前、筆者が局のスタッフを務めていた時、ドッキリ企画を担当したことがあった。タレントのケアやコンプライアンス遵守を意識して、視聴者からのつきにくい企画を放送した覚えがある。
現在では、さらに自主規制が厳しくなり、当時と比べてもよりドッキリ企画が作りづらくなっているようだ。今なお現場にいる人物がため息交じりで現状を教えてくれた。
「まず、タレントに怪我をさせないというのが大前提です。そのため、“危ない企画”はプロデューサーから却下されます。また、どんなに細かいことでもSNSで炎上しないかチェックが入る。今回のさんのドッキリも、後半はかなりありえないような演出ばかりで、なるべくトラブルが起きないように注意したのがよくわかります。あまり街で大騒ぎしていると、を呼ばれるリスクがありますからね。
ちなみに、どの番組とは言いませんが、タレントに対して事前にそれとなく内容を伝える場合もあるようです。すべてはトラブルを回避のため。そもそも、ドッキリ番組で視聴率も取れにくくなっていて、予算がどんどん減っている。大掛かりなロケも難しいし、このままではつまらなくなる一方。消滅の危機にあるのかもしれません」(バラエティ番組製作スタッフ)
◆人を傷つけないバラエティ番組の代表格は…
そんななか、良質なドッキリ番組を制作しているのがTBSだという。同局で放送する『ニンゲン観察バラエティ
モニタリング』は、長く人気を維持している番組だ。2012年10月からスタートし、これまで一般人をターゲットにするドッキリを放送してきた。
代表的なドッキリとして、有名人や有名アスリートが変装し、バレないか検証する企画がある。対面した人たちは驚きつつも、笑顔になる企画ばかり。いわば人を傷つけないバラエティ番組の代表格で、が出るどころか、喜びの声が多く挙がる番組としておなじみだ。
◆『モニタリング』と『水ダウ』は超えられない
また、同じくTBSが制作する『』は、でのお気に入り数が「668.1万」(本稿執筆時)という説明不要のお化け番組。こちらは『モニタリング』と違い、芸人を標的にした過激なドッキリばかりだが、頻繁に炎上しながらもその人気に衰えは見られない。
同番組の7月30日の放送では、泥酔したお笑いトリオ・安田大サーカスのに、起きたら三途の川にいて向こう岸に亡くなった父親がいるドッキリを敢行。
賛否両論を巻き起こしたが、父への思いを号泣しながら語ったの姿を見て「感動した」という声も少なくない。普段は過激なドッキリを行いながらも、たまにこうした企画を行うのも『』の良いところだ。
前出の人物は、ドッキリ番組を作るうえで、『モニタリング』と『』は超えられないと断言する。
「『モニタリング』は、標的になった人を喜ばせるドッキリの形を作りあげた。一方の『』は、昔ながらの悪なドッキリをやりつつ、予算をかけてリアリティを追求した企画ばかりだから視聴者を飽きさせない。ドッキリを仕掛けられた芸人も知名度や好感度が上がり得をするし、番組と出演者がWin-Winの関係になっている。方向性こそ違うものの、制作陣のレベルが高く、他の追随を許さないクオリティの番組といえる」(バラエティ番組製作スタッフ)
YouTubeや動画サブスクと異なり、民法は規制でがんじがらめだ。それでも独自路線を貫く番組は、末永く応援し続けたいものだ。
<TEXT/ゆるま小林>
【ゆるま小林】
某局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、の編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでや芸能人に関するコラムを執筆